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ゴルフ会員権の会計処理

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1.倒産により金銭債権に転換する時期

ゴルフ会員権のゴルフ場経営会社について破産手続開始の決定があり、貸倒引当金の計上を検討していますが、ゴルフ場施設は裁判所の許可を受けて当分の間営業することになる場合、当該ゴルフ場に係る会員権は、いつの時点で実質的に金銭債権に転換するのでしょうか。

1-1.金銭債権に転換

原則として破産手続開始の決定があった時点で、ゴルフ会員権は実質的に金銭債権に転換すると考えられます。

(回答)ゴルフ場経営会社に破産手続開始の決定があった場合は、通常、財産保全の一環として施設は閉鎖され、会員は、破産債権として届け出た預託金債権の範囲内で配当を受けることになります。

照会のように、裁判所の許可を受けて当分の間営業することになる場合であっても、破産手続は清算型の倒産処理手続であり、事業の廃止を前提としていることからすれば、破産手続開始の決定があった時点でゴルフ会員権は実質的に金銭債権に転換すると解されます。なお、破産手続と同様に清算型の倒産処理手続である会社法の規定による特別清算手続において、ゴルフ場経営会社に特別清算の開始決定があった場合にも、その決定があった時点でゴルフ会員権は実質的に金銭債権に転換すると考えられます。ただし、再建型の処理手続である会社更生法の規定による更生手続や民事再生法の規定による再生手続において、ゴルフ場経営会社に更生手続開始の決定や再生手続開始の決定があったことをもって、ゴルフ会員権が金銭債権に転換すると解することはできませんのでご注意ください。

[注]平成20年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。

2.預託金の一部が切り捨てられた場合

ゴルフ場経営会社につき民事再生法の規定による再生計画の認可の決定が行われ、預託金の一部が切り捨てられる場合、そのゴルフ場の会員権を有する法人は、その事実が生じた事業年度において、その切り捨てられた金額を貸倒損失として計上することができますか。

2-1.貸倒損失として損金の額に算入

預託金の一部が切り捨てられ、法律的に債権の一部が消滅した場合には、その切り捨てられた部分の金額については、原則として、切捨ての事実が生じた事業年度において貸倒損失として損金の額に算入されます。
ただし、会員がゴルフ会員権を預託金の額面金額以下で取得している場合は、貸倒損失に計上できる金額は、帳簿価額と切捨て後の預託金の金額との差額を限度とします。

(回答)金銭債権の一部が更生計画の認可決定や再生計画の認可決定によって切り捨てられた場合には、切り捨てられた金額は、その事実が生じた事業年度において貸倒損失として損金算入されます(法人税基本通達9-6-1(1))。

ゴルフ会員権は、会員契約の解除がなければ預託金返還請求権(金銭債権)に転換しません。再生手続は経営の継続が前提となっているので、通常、会員契約は解除されることはないため、認可決定により預託金の一部が切り捨てられたとしても、金銭債権の性格を有しないゴルフ会員権について貸倒損失を計上することは認められないとも考えられます。
しかしながら、会員契約を解除しなければゴルフ会員権が金銭債権と認められないのは、契約上「預託金は、据置期間経過後、退会を条件に返還請求することができる」とされているからであって、契約自由の原則の下では、当事者の合意により、契約継続中のある時点で預託金の一部を返還又は切り捨てるという契約に変更することは可能です。
すなわち、再建型の倒産手続などによって預託金の一部切捨てが行われた場合も、契約変更により、預託金返還請求権の一部が金銭債権として顕在化した上で、その一部が切り捨てられたとみることができます。

また、預託金の一部切捨てという事実は、契約の当事者間に存在した債権・債務関係が法律的に消滅することであり、ゴルフ場経営会社はこのことにより債務免除益を計上することになります。このような当事者間の契約上の債権・債務関係が変更されたという事実を踏まえれば、債権者においても、その消滅した債権に相当する貸倒損失を容認することが相当であると考えます。

したがって、預託金の一部が切り捨てられた場合には、会員が従来どおりゴルフ場施設を利用できても、その切り捨てられた部分の金額については貸倒損失の計上が認められると解することが相当と考えられます。

[注]平成17年4月30日現在の法令・通達等に基づいた一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあります。

3.更生法申立があった際、貸倒引当金の計上

ゴルフ場経営会社について会社更生法の規定による更生手続開始の申立ての事実があった場合、会員権を保有する法人は、当該ゴルフ会員権の帳簿価額の50%相当額を個別評価の貸倒引当金に繰り入れることができますか

3-1.個別評価の貸倒引当金

預託金の一部が切り捨てられ、法律的に債権の一部が消滅した場合には、その切り捨てられた部分の金額については、原則として、切捨ての事実が生じた事業年度において貸倒損失として損金の額に算入されます。
ただし、会員がゴルフ会員権を預託金の額面金額以下で取得している場合は、貸倒損失に計上できる金額は、帳簿価額と切捨て後の預託金の金額との差額を限度とします。

ゴルフ場経営会社につき会社更生法の規定による更生手続開始の申立てが行われた場合でも、退会により施設利用権が失われない限りゴルフ会員権は金銭債権に該当しませんので、当該会員権の帳簿価額の50%相当額を個別評価による貸倒引当金に繰り入れることはできません。

個別評価金銭債権に係る債務者につき会社更生法の規定による更生手続開始の申立てが行われた場合は、その個別評価金銭債権の額の50%相当額を個別評価による貸倒引当金に繰り入れることができることとされています(法人税法第52条第1項、法人税法施行令第96条第1項第3号)。
ゴルフ場経営会社について更生手続開始の申立てが行われた場合に、当該ゴルフ会員権についてこの規定が適用されるためには、ゴルフ会員権として処理していたものの全部又は一部が金銭債権としての性格を有するものである必要があります。
預託金制ゴルフクラブの会員権の法的性格は、会員のゴルフ場経営会社に対する契約上の地位であり、施設利用権、預託金返還請求権、年会費納入義務等を内容とする債権的法律関係であるといわれています(最高裁判所昭和61年9月11日第一小法廷判決)。

会員権に含まれている預託金返還請求権は、一定の据置期間経過後、退会(会員契約の解除)を条件にゴルフ場経営会社に対して預託金の返還を請求し得る金銭債権です。
預託金の拠出は、施設利用権を得るために必要不可欠なものとして拠出されるものですから、預託金返還請求権は、施設利用権と一体不可分となってゴルフ会員権を構成する権利であって、施設利用権が顕在化している間は潜在的・抽象的な権利にすぎません。

ゴルフ場経営会社につき会社更生法の規定による更生手続開始の申立てが行われた場合、更生手続は再建型の倒産処理手続であり、経営の継続を前提としており、会員契約は通常その手続の中では解除されないことからするとゴルフ場経営会社につき会社更生法の規定による更生手続開始の申立てが行われた場合でも、退会しない限りゴルフ会員権は金銭債権としての性格を有しているとはいえませんので、当該会員権の帳簿価額の50%相当額を個別評価による貸倒引当金に繰り入れることはできません。

[注]平成20年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています

出典:国税庁 国税庁質疑事例を参照

4.預託金の一部が返還された場合の取扱

預託金2,000万円の会員権について、預託金800万円の会員権2口と現金400万円の交付を受けることとなりましたが、このようにゴルフ会員権が分割されるとともに預託金の一部が返還された場合、返還された金銭は益金の額に算入することとなりますか。

4-1.会員権の取得価額から減額

当該返還された金銭は、当事者の契約内容の変更によって会員権の取得価額を形成する預託金の価額の一部が回収されたものと解されますので、当該返還された金額は会員権の取得価額から減額することになります。

(回答)会員権の分割に伴って交付された金額は、当事者の契約内容の変更によって、解約しなければ返還されなかった預託金返還請求権の一部が金銭債権として顕在化した後、会員に返還されたものです。つまり、会員権の取得価額を形成する預託金の価額の一部が回収されたものと解されます。したがって、返還された金額は、会員権の取得価額から減額することになります。  なお、新たに付与された会員権の取扱いについては、会員権の帳簿価額から返還された金額を減額した残額を基礎として帳簿価額の付替計算を行うこととなります。

[注]平成20年7月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。

出典:国税庁 国税庁質疑事例を参照